出会いで広がった共感の連鎖は、夢を実現する大きな力に!
~日本で初めてのダウン症専門デイサービス開設に向かって~
2018年度インタビュー実施
特定非営利活動法人ダウン症ファミリー総合支援めばえ21 永田 和子さん
日本初のダウン症児専門デイサービス
2017年8月、箕面本通り商店街の中にNPOによるものとしては日本で初となるダウン症児専門のデイサービス「めばえ21」が開設されました。 運営しているのは「特定非営利活動法人ダウン症ファミリー総合支援 めばえ21(以下「めばえ21)」の皆さん。代表の永田さんは、自身が4回の流産と1回の死産を経てようやく妊娠した際、胎児がダウン症児であることがわかりました。当時は周囲にあまり情報もなく、その時の心境は言葉に尽くせないものであったと思います。どうやって育てたらよいか悩まれましたが、ダウン症の子を持つ当事者の方との出会いも心の支えとなり出産を決意されました。 ダウン症の子どもは筋力の発達が遅いなどの特徴があり、食事や着替えなど生活のさまざまなことができるようになるのには平均的な子どもより時間がかかります。そうした身辺自立のサポートを受けることができるよう、生まれたお子さんは公立の保育所に通っていましたが、その子が4歳児のクラスに上がるとき、支援の必要な子どもでも親が働いていなければ保育所に通い続けることができないようになりました。永田さんは子どもが引き続き同じ保育所に通い続けることができるよう働く場所を探しました。幸い看護師の経験を活かして医療関係施設で働くことができるようになりましたが、この時、ダウン症児の支援のためには親が働ける場所も必要なのだと感じるようになりました。
「夢の実支援金」にチャレンジ、ダウン症児の『やってみたい!』応援教室を開催
医療機関への就職は、支援の必要な子どもにとっての専門的なサポートの重要性を感じるきっかけにもなりました。一方、当事者であるからこそ踏み込んで伝えられることもあります。永田さんたちが考える理想的な支援は、さまざまな専門性と、当事者としての経験や想いを併せ持つものであり、「当事者である親が専門家と連携して専門性を身につけ、スタッフとしてそれを提供するデイサービスを立ち上げたい」ということを思い立ったそうです。 その頃、ふと市報に掲載されていた『夢の実支援金』の記事が目にとまり、「こんな制度があるならチャレンジしてみよう!」と『みのお市民活動センター』に相談をしました。それが夢の実現に向けて大きく動き出した瞬間でした。 永田さんたちは初年度、立ち上げ支援のコースで「ダウン症児の『やってみたい!』応援教室」事業への交付を受け、ダウン症の子どもを対象としたさまざまな療育・スポーツ・文化の活動に取り組みました。そして次年度以降の3年間は事業の拡充・発展を対象としたコースに申請し、体験教室を継続・発展させながら、講演会等ダウン症についての啓発活動、デイの設立を視野に入れた研修会等にも取り組んでいきました。そして支援金交付の年限となる2017年度に、ついに念願のデイ設立が実現しました。
ダウン症で生まれても何の心配もない社会を目指して
活動の先にある夢の実現に向かって 理想とする支援のためには、スタッフの養成を始め、取り組むべき課題はまだまだあります。それでも永田さんは、人との出会いがそれらを乗り越える大きな力になっているといいます。困難に直面したときに周りを見渡すと、何かしら心に響くことに導かれて道が開けると実感したそうです。声を上げることで、自分たちができないことや弱い部分を助けてくれる人とつながって今があるのだと。出産前に出会ったダウン症児の親の方とは以降も交流が続き、その後に出会ったダウン症児の親の仲間たちとともに「めばえ21」の母体となりました。また以前に交流会を通じて関わった学生の方が、活動に大きく共感して「めばえ21」を就職先に選んでくれることもありました。このような、人との出会いこそが活動を進める大きな原動力。永田さんはたくさんの人と出会い、苦しいことがあってもきっと誰かが背中を押してくれると信じています。「ダウン症児のファミリーのためにこの活動を進めることが自分の使命。この生き方にぶれはありません。ダウン症の子どもを持つことは、親として誰でも有り得ること。ダウン症で生まれても何の心配もない社会をつくりたいと思っています。」永田さんの屈託のない明るい笑顔のなかに一途に進んでいく秘めた力を感じました。
ダウン症の子どもを持つ親と有志が立ち上げた、ダウン症者とその家族を支援する団体です。ダウン症の子どもたちがより豊かな未来を歩めるように、デイサービス事業・啓発事業・きょうだい支援・支援グッズ開発等の様々な活動を行っています。デイサービスを開設してから、医療や教育等の専門機関との連携や、活動に共感して支援する人が増えるなど、活動が広がっています。