「癒しの連鎖」でめざす「地域で支える丸ごと共生社会」
~ボランティアの大きな力を感じて~
I FOR YOU Japan 代表 森 一郎さん
2017年度インタビュー実施
箕面市内で「がんサロン」を開催
今、“がん”は日本人の3人にひとりがなる病気といわれています。医療技術も進歩し、治療後、通常の生活が送れるようになるかたも多くありますが、どうしてもその進行を止められないこともあり、命、人生に大きく関わるものであることは変わりありません。 箕面市で4年以上にわたって「がんサロン」を開催してきたグループの代表、森一郎さんは、医者として肺がんの化学療法に従事されてきました。病院などの医療機関は、一般的には、病気やケガを治すところと思われていますが、「ホスピス」と呼ばれる一部の医療機関では、治療による回復が難しい患者に対し、痛みなどの身体的問題や心理的なものなど、さまざまな苦痛に対処する「緩和ケア」を行ない、そのかたが自然な形で人生の終末期に向き合うことができるようにしています。
ボランティアを通じた心の交流が、人生を豊かにしてくれる
森さんは、箕面市内のガラシア病院のホスピスで働きはじめ、そこで病院ボランティアという存在に初めて触れることになりました。 それまであまり「ボランティア」に接した経験がなかったという森さんですが、ホスピスに来られている患者とそのご家族が、ボランティアの人間性と「癒しの心」で大きく癒されるのを目の当たりにし、ボランティアの持つ大きな力に衝撃を受けたそうです。このホスピスの雰囲気を地域に出して行くことができないかと、医者としての仕事の一方、市民ボランティアとしてコミュニティセンター豊川北小会館「鐘の鳴る家」で「がんサロン」を始められました。 始めてみると、ボランティアをしている自分自身が、がんサロンが終わったときにとても「元気になっている」ことを実感されたそうです。「相手を大切に思う、心の交流がそうさせている。また、ボランティアとしての人との出会いは人生を豊かにしてくれる。マインドの近いかたと出会えることは仕事にもプラスになると感じる」 2013年2月から毎月1回ずつ開催を重ねてきた「鐘の鳴る家」でのがんサロンも50回目を迎えた今年(2017年)の3月、森さんたちメンバーはグループの名称を「I FOR YOU Japan」と改め、新たにNPOとして箕面市にも登録をし、みのおキューズモールの中にある「みのお市民活動センター」内に事務所を構えて新たなスタートを切りました。
「あなたのために」が響き合う場所
「I FOR YOU Japan」は、「地域で支える丸ごと共生社会」をコンセプトとして掲げています。相手を大切に思い、そのかたのためになることをする、そうした「あなたのために」が響きあうことで相手も自分も元気になる、4年間におよぶがんサロンで実感した「癒しの連鎖」の経験を元に「市民全体で医療問題に取り組む社会つくり」をめざしていこうとしているとのことです。また同時に「共生社会の創造」というコンセプトのもと、様々な地域活動を行う予定です。 箕面で取り組みをはじめた森さんたちの活動は、今後徐々に形をなしていくものと思いますが、お互いが相手のことを考える「ホスピス・マインド」や、ボランティアを通じた「癒しの連鎖」を中心においた社会は、きっと素敵なものだろうなと思います。